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モデルロケットを通して技術を学ぶ【電気エンジニアトレーナー加藤です】

投稿者:トレーナーブログ管理者 |投稿日時: 2021年10月20日

少しずつ寒い日が増えてきましたね、電気エンジニアトレーナー加藤です。

皆さんはモデルロケットというものご存じでしょうか?

火薬を使用して飛行するロケットで教育用の教材として世界中で利用されています。主に青少年の科学教育の一環として利用されていますが、奥が深く子供だけでなく大人も楽しむことができるものなので本気で楽しんでいる大人もいます、モデルロケットに関する各種競技が国内外で開催されています、もちろん世界大会もあり、世界各地で隔年開催されています(日本人が優勝したこともあるんですよ)。

モデルロケットは、1960年代にアメリカで利用が始まり、宇宙開発ブームに乗って主に青少年の宇宙航空教育用の教材として広まりました。日本では1990年に日本モデルロケット協会が設立され青少年への宇宙科学に対する啓蒙とライセンスを発行し安全な打上のできる人材育成を行っています。

 

モデルロケットは安全の確保と環境への配慮が考慮されていて、推進薬や構造が明確に定義されています、推進薬である火薬は紙製の交換式カートリッジ(エンジンと呼びます)になっていてその性能が公開されています、機体は紙又はプラスチックであることとなっています。また、打ち上げは電気(電池)で点火することパラシュートなどを使用して安全に回収できるようにしなければなりません。

上記規約の範囲内であれば何を使ってもよく身近な材料を使って作ることが可能です、本体部分は紙であればよいので画用紙、マーブルチョコのケース、ラップの芯など探してみると使えるものいろいろあります。また専用の材料も販売されていますので、Amazonなどで購入して利用するのも良いでしょう。電池式の点火装置(ランチコントローラ)やパラシュートなどの回収装置も市販の物ありますが、自作も可能でやってみると意外をハードルは低いです。

興味を持たれたかたは”モデルロケット”でググってみてください。

 

上記のルールを理解したうえで、スケール機や競技用の機体を作って打ち上げて楽しめます、この作業の流れはこんな感じです。

 

1.企画:今回はどんなロケットにしようかなーと夢が広がる楽しい時。同時に参加するイベント、予算、手持ち材料の確認など現実の部分もしっかり確認します(夢を追いすぎると失敗します)。

 

2.設計:ここでは企画に基づいて、大きさ、構造設計、そこから決まる重量、使用エンジン、高度、及び安定に飛行させるための空力設計を行います。これらの要素はそれぞれが関連しているので最適化させることは大変なのでツールを使っちゃいます。

 RocSimという有名なツールがありますが有料ですからOpenRocketというフリーソフトを使います。一通りの設計検証には十分な機能があります。このツールで機体の各要素を入力していくとロケットの飛行に関するパラメータのほとんどを算出することができます。

 中でも重要なのは空力特性です、モデルロケットには誘導装置を載せてはいけない規則があり空力的な安定条件を必ず満たす必要があります。といっても難しいことではなく重心位置が気体の圧力中心位置より前にすれば良い(バトミントンのシャトルが安定押して飛ぶアレです)ので、シミュレーター上で先端(ノーズコーン)に重りを載せたり、尾部のフィン形状を変えたりして重心位置や圧力中心位置を調整していきます。

 ここでは、国内の大会の中で打上げ高さを競う高度競技用ロケットの設計例を紹介します。この競技で使用するロケットは本体の直径25mm以上、長さ250mm以上という規定があるのでこれを満たしたうえで勝つためにはできるだけ軽く小さなロケットを設計をしていきます。これまでのノウハウをもとに設計を進めていくとこんな感じになりました。ツールの下半分に描かれているロケットの中でGPと青丸で表示されているのが重心、CPと赤丸で表示されているのが空力中心になります、いずれも先端からの距離で表示されます、今回は1mmだけ重心が前になるようにしました。

 これで1/2A6エンジンと使用した時の獲得高度が70mになりました、今の私が作れる最適解かなぁー というところで設計終了。

3.製作:設計が完了すればいよいよ製作です、設計時点で材料の選定、工作難易度の想定ができていれば、手を動かすだけで出来ていきます。材料は紙とバルサ(非常に軽い木材)が主体になります。紙も木も強度の出る方向があり目的にあった材料の切出しと軽くて強度の出る方法で組み立てていきます。

 ここで活躍するのが接着剤ですが、主に木工ボンドを使いますがゴム系の接着剤や、液性のエポキシ接着剤も要所に使っていきます、瞬間接着剤はスグついてよいのですが硬くてもろいので接着部が衝撃で壊れやすいという特性がありできるだけ使用は控えます。

 ロケットの先端部分は軽く作りたいので、バルサという非常に軽い木を削って作ります、本体部分も紙やフィルム、薄い木材を巻いて作ったりします、競技用のロケットといっても身近なもので材料は揃えられます。

 

 

4.打上:ロケットが設計通り出来上がるといよいよ打ち上げです、推進薬である黒色火薬は紙製の筒に収められたユニットになっていて、かつ簡単に燃えだすことがないように作られています。これに点火するにはイグナイタと呼ばれる専用の点火器を使用します、イグナイタには2本の端子がありここに6.3W以上の電力を流すとボっと燃えます、エンジンの後端にイグナイタを差込む穴があり奥まで差込むと火薬部分に届くようになっているので、しっかり奥まで差込んだらランチコントローラに接続して発射ボタンを押せばエンジンは点火してくれます。

 実際の打ち上げでは、安全な打ち上げ場所を

確保(半径20m以内に人がいない場所、近くに電線などがない場所)して、

ランチャーをセット、イグナイタにコントローラからの電線をセットして周囲と上空の安全を確認したら、

カウントダウン5-4-3-2-1 点火!シューッ

と結構大きな音でロケットは空高く飛んでいきます、

小型のロケットでも作り方で100mぐらいまで上昇すしますので、結構迫力があり感動ものですよ。

特に自分で設計したロケットが想定通りの飛行をしたときは大きな満足感が得られます。

 

5.回収:ロケットが空高く上がりエンジン燃焼の最終段階では放出薬に点火されるので、ポンという音とともにパラシュートが開いてゆっくり降りてきます。この回収までがロケット打ち上げです、したがって風向き、風の強さ、から発射角度を設定してここぞという時に発射ボタンを押します!また降下するパラシュートを目で追って落下地点を確認して確実に回収します。ここでは自然条件とふれあうことができますよ(実際のロケット打ち上げでも風や気温といった気象条件で打上条件が変わったり中止になったりしますよね)。回収したロケットにはたくさんの情報が載っています、どこが良かったのか、何が問題だったのか、調査の上で次の設計・製作に繋げていきます、私にとってはココが一番楽しいとこです。

 

と書いてきましたが、上記5つの工程は実際の開発現場(本物のロケットの開発も含めて)の工程と大きく違いません、一連の開発作業を一人で体験できる貴重な機会を与えてくれるのがモデルロケットです。そもそもロケット工学は多くの技術の集合体です、どこからでも学べますしどこまでも学べるとて素敵な技術/学問です。

今回は簡単な紹介にとどめましたが、ここで興味を持たれた方はぜひトライしてみてください、また機会がありましたら他のモデルロケットにお楽しみ方など紹介したいと思っています。

最後に、これから始めようという人のためのロケットとして”アルファⅢ”を紹介します、これはESTES社製の非常によくできたロケットで組立てやすく(小学生低学年でも作れる!)丈夫でかつ性能が良い三拍子そろったロケットです、ランチコントローラから発射台までセットされたスタータセットなどもあります(Amazonで購入可能です)。

またこのクラスですと安全な打上場所(半径10mの安全距離)さえ確保できれば無許可で打ち上げできますからまずはこちらからはじめてみてはいかがでしょう!?

参考URL

Estes https://estesrockets.com/

Estes 初めにページ https://estesrockets.com/get-started/

日本モデルロケット協会 https://www.ja-r.net/

※日本モデルロケット協会では、モデルロケットの安全な取扱いと打上に関する講習を、ライセンス講習会として毎月開催しています、打上実習も含んでいますので受講お勧めします。

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